僕が最初の病院で働いていた頃、肩の腱板断裂は「自然治癒は難しい」と教わりました。
最近クリニックで働き始め、再び肩の痛みのある患者さんを担当する機会が増えたので、復習も兼ねて最新の研究を調べてみました。
結論
結論から言うと、
切れた腱板(腱)は自然につながることはほとんどありません。
ただし、
- 腱板が切れていても痛みがない人はいる
- 腱板が切れていても肩を動かせる人はいる
- MRIで断裂があっても日常生活に支障がない人もいる
ことも知られています。
10年以上前に僕が病院で教わった内容と、大きく変わってはいないようです。
腱板断裂は時間とともにどうなる?
多くの研究では、腱板断裂を保存療法で経過観察した場合、
- 断裂サイズが大きくなる
- 筋萎縮が進行する
- 脂肪変性が進行する
などのことが報告されています。
つまり、
「自然にくっつく」というよりは、「時間とともに進行する可能性がある」
と考えた方がよさそうです。
① 長期経過観察研究(Moosmayerら, 2017)
89肩の小〜中サイズの腱板断裂を保存療法中心で追跡した研究です。
平均8.8年後に再評価したところ、
- 多くの症例で断裂サイズが増大
- 筋変性が進行
- 一部は手術へ移行
していました。
少なくとも、この研究では自然修復したとは言えない結果でした。
② MRI追跡研究(2020)
保存療法を行った全層断裂48例を約22か月追跡した研究です。
結果は、
- 54%で断裂サイズが拡大
- 41%で前後方向への拡大
が認められました。
さらに、
- 棘下筋萎縮
- 糖尿病
- 経過期間の長さ
が進行のリスク因子とされていました。
③ 大規模MRI研究(2022)
保存療法を行った206例を解析した研究です。
結果は、
- 全体の61%が進行
- 全層断裂の74%が拡大
- 部分断裂の29%が全層断裂へ移行
というものでした。
改めて、腱板断裂は経過とともに進行するケースが少なくないことが分かります。
ここが大事:組織治癒と症状改善は別
ただし、ここで少しややこしい話があります。
それは、
「組織が治ること」と「症状が改善すること」は別である
ということです。
これは肩だけではなく、腰や膝、アキレス腱などにも共通する考え方です。
MRIで断裂が残っていても、
- 痛みが改善する
- 肩が動くようになる
- 日常生活に困らなくなる
ことは十分あります。
逆に、画像上は大きな問題がなくても痛みが強い人もいます。
まとめ
現在の研究から考えると、
- 腱板断裂そのものが自然治癒する可能性は低い
- 断裂は時間とともに進行することがある
- しかし、断裂があっても症状は改善する可能性がある
というのが現時点での理解になりそうです。
大切なのは画像所見だけを見るのではなく、
「その人がどれくらい痛いのか」
「どれくらい動けるのか」
を評価しながら、
・損傷した組織にどの程度の負荷が適切となるのか
・損傷部位にストレスをかけないように、他の部位を動かしていく
などを考えながらリハビリを進めていくことが大切になると考えます。
腱板断裂や部分断裂に対する運動療法についても今後まとめていきたいと思います。

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